平成13年7月6日 閣議決定 
新総合物流施策大綱
 
第一部 基本的考え方
 
はじめに
 
 政府は、平成9年4月に「総合物流施策大綱」(以下「平成9年大綱」という。)を策定し、平成13年を目途に、関係省庁が連携して第1に掲げる3つの目標の実現に向けて、諸施策を着実に実施してきた。
 他方、平成9年大綱策定以降の我が国経済を巡る情勢は、世界経済のグローバル化、情報化が一層進展する等の中で、国際的に魅力ある事業環境及び生活環境の創出並びに我が国産業競争力の強化に向けて効率的な物流基盤の整備を進める必要性が依然として顕在していることに加えて、環境問題の深刻化、循環型社会の構築等物流を巡る新たな課題への対応が求められている。
 このため、昨年12月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画(第3回フォローアップ)」においても、平成9年大綱改定の方針が示されているところである。
 かかる状況を踏まえ、平成9年大綱を見直し、今後も手を緩めることなく、新たな課題にも積極的に対応した物流システムを構築すべく、新たな総合物流施策大綱(以下「新大綱」という。)を策定する。
 
第1 平成9年大綱の評価と新大綱策定の必要性 
 
 物流分野においてコストを含めて国際的に遜色のない水準のサービスの実現を図ることを目指して策定された平成9年大綱は、3つの目標を掲げたが、現時点において、その実施状況を振り返れば、以下のとおりである。     
 「アジア太平洋地域で最も利便性が高く魅力的な物流サービスの提供」という目標に関しては、関連施策が着実に実施され、一定の効果を上げてきたものの、アジア太平洋地域において先進的な国際港湾等の整備も進み、我が国と比べコンテナ貨物の取扱量を大きく伸ばしている中、我が国の国際港湾においては、コンテナ貨物取扱量の伸びは低位にとどまっているほか、船舶の大型化や港湾のフルオープン化への対応や輸出入及び港湾諸手続に関する電子化・ワンストップサービス化の実現による一層の簡素化・効率化の必要性も依然として指摘されている。また、国際港湾等と高規格幹線道路網との接続は逐次改善されてきているものの、道路、港湾、空港等の物流関連社会資本等の機能強化と各輸送モード間のアクセスの改善、都市内交通の円滑化、物流システムの一層の標準化・情報化、非効率な商慣行の改善等が依然として課題となっている。これらの事情から、アジア太平洋地域との相対的な関係を変化させるまでには至っていない。
 また、「産業立地競争力の阻害要因とならない水準のコストでの物流サービスの提供」という目標に関しては、我が国の物流コストはわずかではあるものの低下傾向にあり、例えば、米国と比較しても必ずしも高いとは言えない水準にあるが、アジアの先進港湾に比べ港湾諸料金は概ね高い水準にあり、あらゆる面で国際的な競争が従来以上に激化している中、我が国の国際競争力を高めていくために、引き続きその低減に努めていくことが重要である。
 さらに、「物流に係るエネルギー問題、環境問題及び交通の安全等への対応」という目標に関しては、物資輸送の円滑化のためのハード・ソフト両面のインフラの整備やトラックの自営転換の推進、交通事故抑制対策等を進めてきたが、大気汚染物質の排出削減の課題や、地球環境の保全、循環型社会の構築といった新たな課題への対応のための更なる取組が求められている。
 以上を踏まえるとともに、次のような課題に対応するため、新たな大綱を策定し対応することとする。
 
@ グローバル化の進展に対応した国際競争力の更なる強化
 
 世界経済のグローバル化は一層進展し、調達・生産・販売活動も国境を越えて広く展開されているが、国家として、国際競争力のある経済主体と、それを支える経済社会システムを備えているか否かが国際経済社会の中における地位に決定的な意味を持つ時代であることから、物流分野も含めて、我が国の経済社会システムを一層競争力のあるものにしていかなければならない。
 このような中、近年のアジア諸国からの輸入の急激な拡大等に伴うコンテナ貨物の増大や、外航船社間の競争激化等に伴う船舶の大型化が進むとともに、国際航空貨物輸送も拡大を続けており、これらに対応するため、中枢・中核国際港湾及び大都市圏拠点空港の整備が進められてきた。しかしながら、先進的な国際港湾等近隣諸国における主要な物流拠点の整備が進み、その取扱量が大きく伸びている中、我が国の国際港湾においてはハード・ソフト両面の一層の改善が要請されていることからその機能強化を図るとともに、大都市圏拠点空港の整備を時機を逸することなく進めることが必要である。
 さらに、外資系企業の国内市場への参入等の進展に伴い、流通構造を巡っても欧米型の新たなビジネスモデルへの対応が求められるなど、国内物流面でもグローバル化の進展は看過できない状況にある
 これらを踏まえ、我が国の国際競争力を一層向上させ、経済の持続的な発展をもたらすためには、物流分野においてもグローバル・スタンダードを意識しつつ、効率化を図る必要がある。
 
A 環境問題の深刻化、循環型社会の構築等社会的課題への対応
 平成9年12月の「気候変動に関する国際連合枠組条約」第3回締約国会議で採択された「京都議定書」の目標達成を図る必要があるが、物流を含めた運輸部門の二酸化炭素排出量は、年々増加傾向にあることから、今後の年間排出量を減少させることが必要である。
 また、大都市における大気汚染等の環境問題が深刻な状況にあり、これに対応するためには、発生源である自動車単体の排出ガス規制等自動車そのものの低公害化の推進、環状道路の整備等による渋滞の解消が必要である。しかし、これらの抜本的対策が効果を発現するには長期間を要し、これらの施策だけでは当面する課題を直ちに解決することができないことにかんがみ、輸送需要に働きかけていく施策を併せて積極的に進めていくことが必要である。
 さらに、各種リサイクル法の制定・施行等が進められる中、循環型社会における有用性が着目されている循環資源の効率的な環流ルートの形成が求められており、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築するための環境を整備することが必要である。
 上記のほか、依然として大型トラックによる事故が高速道路における追突事故を始めとする重大な事故につながっている等の現状にかんがみ、物流分野における事故防止対策は重要な課題である。
 
  B  情報通信技術の飛躍的進展への対応
 情報通信技術(IT)は著しくかつ急速に発展し、大量の情報の収集・加工・流通やネットワークの形成を容易にしている。物流面でも、ITを活用して安全、円滑、快適な道路交通環境をつくる高度道路交通システム(ITS)等のインフラの高度利用に資するシステムの導入・開発が進められてきている。また、既に一部の企業では、物流EDI(電子データ交換)の導入が進んでいるほか、サプライチェーンマネジメント(SCM)の考え方を導入・実践し、具体的な成果を得ている等、情報化への対応が企業の競争力に大きな影響を与える状況となっている。しかしながら、物流の全体最適化の観点からみた場合、個々の企業におけるITの導入の遅れや、企業間あるいは輸送モード間での情報共有化・オープンネットワーク化が進んでいない等、ITがもたらす効果が必ずしも十分に発揮されていない。このため、次世代情報通信技術にも積極的に対応しつつ、物流分野における情報化を一層加速化することが求められている。
 
C 国民ニーズへの対応と国民生活との調和
 日々の暮らしに必要な物資が海外や全国各地の生産地から家庭まで届けられるあらゆる過程において、物流は不可欠な社会基盤としての役割を果たしている。情報化の進展に伴う生活スタイルの変化や本格的な少子高齢化社会の到来等により、消費者向けを始めとして、物流は、今後、更に少量化、多頻度化の傾向を強めていくと考えられるとともに、労働市場の変化が見込まれる。このような我が国社会の変化に対応し、物流活動の効率化を進めていくことが必要であるとともに、一方で、国民の日常生活を支える観点からは、災害に強く、安定的な物流サービスの提供を確保することも必要である。また、特に都市部における生活活動との調和を図る観点からは、街づくりにおいて物流の円滑化にも配慮した取組が必要となっている。
                 
第2 施策の基本的方向性
 
(1) 目標と視点
 
 平成9年大綱の目標年次を迎えた今、平成9年大綱で示された3つの基本的目標の達成に向けて政府として努力を継続することはもちろん、顕在化してきた新たな課題を克服し、21世紀を迎えた我が国経済社会にふさわしい新たな物流システムの形成を目指していく必要がある。
 このため、国際的に遜色のない水準のサービスを目指す姿勢から、新大綱においては、一歩踏み込んで、物流分野において、コストを含めて国際的に競争力のある水準の市場が構築されることを目標として、総合的な施策を推進する。同時に、環境問題の深刻化を始めとする社会的課題への対応や豊かな国民生活の実現が強く求められていることを踏まえ、物流の利便性及び効率性の向上等に加え、環境負荷を低減させる物流体系の構築と循環型社会への貢献を目指すこととする。これらの目標を、可能な限り早期に、遅くとも平成17年(2005年)までに達成することを目指して、今後の物流施策を講じることとする。
 その際、施策の優先度を明確化し、重点的・効率的な施策を展開することが重要であり、政府は、以下の視点に基づき、速やかに施策の推進を図ることとする。
 
@ 政府及び民間の関係
 
 国内外における競争の一層の激化、物流分野における規制改革の進展等にかんがみ、民間セクターにおいては、自由で公正な競争を通じた様々な創意工夫等により、効率的な物流システムの実現に重要な役割を担うことが期待される。その際、物流コストの明確化や企業内・企業間における情報共有化等を通じた無駄の排除を一層進めることが重要であり、物流コストのより正確かつ適切な把握、情報化・標準化を活用した効率的な手段の積極的利用、過度な多頻度小口・時間指定配送の是正等の効率的な商慣行の構築、共同化・集約化の推進等の取組などが必要である。
 一方、政府においては、民間セクターの活力が発揮されるためのハード・ソフト両面の環境整備を行うとともに、都市部における渋滞や環境問題等民間セクターのみでは解決できない社会的課題の解決に向けた取組を行う。
     
A 国及び地方公共団体の関係 
 
 国・地方公共団体の適切な機能分担・連携の下、施策の推進を図ることが必要である。全国レベルでの効率的な物流ネットワークの構築・維持に向けた施策の推進、輸送機器の規制レベルの整合性の確保等については国が責任を持ってこれを行う一方、物流システムと地域社会との調和や循環型社会の構築の必要性が高まっていることにかんがみ、都市内の交通需要マネジメント(TDM)など地域内物流に係る分野においては、国と連携しつつ、地方公共団体が重要な役割を果たすことが期待される。
  
B 公正かつ競争的な物流サービス市場の構築
 
 我が国の物流システムの効率性を高め、新規参入が進み新たな業態・サービスが生み出されるような国際的にも魅力的な活力ある事業環境を創出するためには、残された規制の見直し等制度面からの取組とともに、情報化の推進、商慣行改善に係る施策等総合的な活性化施策の取組を通じて競争を促進し、公正かつ競争的な物流サービス市場の構築を図ることが必要である。
 
C 物流関連社会資本の重点的・効率的な整備等
 
 物流の利便性、効率性等の向上、環境負荷の少ない物流体系の構築等に資するため、各輸送モードの効率化と相互の乗り継ぎ利用の円滑化に資する社会資本の整備に積極的に取り組む必要がある。
 この場合、我が国財政の置かれた厳しい現況を踏まえて、徹底した費用対効果の検討を通じた重点化・効率化を図るとともに、新技術の導入、運営方式の改善等による既存施設の高度かつ効率的な利用を進めることが重要である。
 
(2) 施策の方向性   
 
@ 国際競争力のある社会実現のための高度かつ全体効率的な物流システムの 構築
 
 国内物流・国際物流それぞれについて、リードタイムの短縮、定時性の確保等の利便性の向上及びトータルコストの低減に向けた環境整備に努め、高度かつ荷主、物流事業者双方にとって全体効率的な物流システムの実現を図る。
 
(ア) 高度かつ全体効率的な物流システムの構築
 民間セクターの活力が発揮されるためのハード・ソフト両面の環境整備を図るとともに、高度かつ全体効率的な物流システムを構築する観点から、所要の施策を講じる。
 具体的には、物流の共同化・情報化を進めるとともに、特に都市部における受荷主を中心とする効率的な物流システムにより過度の多頻度輸送を改善した事例なども踏まえた、非効率な商慣行の改善等に向けた荷主、物流事業者の自主的な取組を促進する。
 加えて、民間事業者が事業活動を弾力的かつ円滑に行うことができるよう、物流分野における規制改革や行政手続の簡素化・効率化を図る。また、物流システムの高度化・効率化に資するための所要の技術開発やモードを超えた総合的な物流サービスの提供を促進する方策の検討を行う。
 また、作業効率性の向上を図り、高齢者や女性にも適した作業環境を整えるためには、パレタイズ可能貨物についてはパレット利用を作業の標準とする必要がある。このような考え方に立ち、平成17年までに、パレタイズ可能貨物のうちのパレタイズ比率を約9割に上昇させるとともに、標準パレットの比率を欧米並にすることを目指す。標準パレットの利用促進やプールシステムの普及等により、一貫パレチゼーションを中心としたユニットロード化を進展させる。
 国内の地域間物流においては、多様な輸送モード間の競争と相互の連携、利用者の自由な選択を通じて適切な役割分担がなされる交通体系の構築を目指すマルチモーダル施策を推進し、効率化を図る。トラック輸送については、全国的な幹線道路ネットワーク整備、物流拠点整備、幹線共同運行の促進等による効率化を進める。内航海運については、船舶の大型化・高速化等による効率化を進める。また、海上輸送の効率性と船舶航行の安全性とを両立させた海上ハイウェイネットワークの構築を進めることとし、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備等により、陸上輸送半日往復圏の人口カバー率を21世紀初頭までに約9割まで上昇させる。貨物鉄道については、主要幹線鉄道の貨物輸送力強化と所要時間の短縮を進める。さらに、各輸送モード間を相互に連結するアクセス道路と結節点施設の整備を進め、21世紀初頭までに自動車専用道路等のICから10分以内に到達可能となる主要な空港及び港湾の割合を約9割にすることを目指す。
 都市内物流においては、深刻な交通渋滞を緩和して、トラック輸送の定時性と速達性を高めるため、環状道路の整備等による交通容量の拡大とTDM施策に積極的に取り組んでいく。併せて、物流行政、都市行政、道路行政等が連携して、幹線輸送と都市内集配輸送の積替え機能を有する物流拠点の適正配置や都市内集配拠点の整備を推進する。これらにより、21世紀初頭までに、三大都市圏における人口集中地区の朝夕の平均走行速度を25キロメートル毎時に改善するとともに、トラック全体の積載効率を50%に引き上げることを目指す。
 
(イ) 国際物流拠点の機能強化等
 我が国の国際競争力の維持・向上の観点から、ボトルネックを解消し、国際物流拠点の機能強化等を図る。
 このため、中枢・中核国際港湾及び大都市圏拠点空港、高規格幹線道路等の幹線道路ネットワーク並びにこれらを相互に連結するアクセス道路や関連する物流施設を重点的に整備するとともに、ITS等の新技術を活用した既存施設の管理運営の高質化・能力向上を推進する。
 また、ソフト面では、港湾物流分野について、引き続き、利便性の向上、リードタイムの短縮を推進する。具体的には、港湾荷役の効率化やサービスの向上を図ることに加え、官民両セクターが連携して、24時間フルオープン化に向けた取組を行う。輸送結節点である港湾・空港においては、輸出入や施設使用に関する多くの行政手続が必要とされ、また、多くの関係者間で多様な取引が行われることから、情報化の程度が、国際物流の効率性を大きく左右する。このため、輸出入及び港湾諸手続に関する電子化(ペーパーレス化)を平成15年度までに実施し、引き続き、できる限り早期に、ワンストップサービス化を完了する。
 さらに、貿易関連手続については、適正さを確保しつつ、より簡素化・効率化するため、通関手続等の各種行政手続の改善を行うとともに、民間におけるEDIの導入を促進しつつ、官民間の情報ネットワークの相互接続等に取り組む。
 これらの措置により、船舶が入港してから申告までに必要な時間などを短縮し、平成17年度までに、輸入コンテナ貨物について、入港から貨物がコンテナヤードを出ることが可能となるまでに必要な時間を2日程度にすることを目指す。
 
A 社会的課題に対応した物流システムの構築
 
(ア) 地球温暖化問題への対応
 「京都議定書」の温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、物流分野においても排出抑制策を強化する。
 このため、輸送機関単体の燃費面での性能向上を図るほか、トラック輸送の効率化の観点から、車両の大型化、情報化・共同化を促進するとともに、幹線道路の改築等による交通円滑化、物流拠点整備支援等の施策を推進する。
 また、鉄道の輸送力増強・所要時間の短縮やモーダルシフト船の整備等を促進するとともに、環境負荷の少ない大量輸送機関である鉄道貨物輸送・内航海運の活用(モーダルシフト)を推進し、モーダルシフト化率(長距離雑貨輸送における鉄道・内航海運分担率)を向上させ、平成22年(2010年)までに50%を超える水準とすることを目指す。
 さらに、荷主や物流事業者が、自らの物流に係る事業活動による二酸化炭素排出量の把握や環境負荷の少ない輸送システムへの転換を行うこと等、民間セクターに期待される自主的な取組が促進されるよう所要の環境整備を行う。
 
(イ) 大気汚染等の環境問題への対応
 大都市における粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)等の環境問題に対応するため、関係機関が連携して、地域毎の特性に合わせた物流システムの改善に取り組むことが重要であり、発生源である自動車単体の排出ガス規制の強化、低公害車・クリーンエネルギー自動車等の開発・普及等や、積載効率の向上等のトラック輸送の効率化、環状道路の整備等による交通容量の拡充、TDM施策等の施策を総合的に推進する。
 さらに、都市中心部のトラックの通過交通を回避する輸送手段として、鉄道等の活用につき検討する。
 
(ウ) 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築
 地方公共団体とも連携して、今後のリサイクル拠点の配置にも対応しつつ、循環型社会の実現に貢献する新たな物流システムを構築していく。
 具体的には、効率的な物流システムの検討、必要な施設の整備等の環境整備を行うとともに、静脈物流の環境負荷を極力小さいものとする観点から、鉄道・海運の利用の推進に取り組む。
 
(エ) 事故防止等物流の安全問題への対応
 運送事業者の運行管理の充実や大型トラックの速度抑制等、事故の未然防止や拡大防止のための施策を強化する。一方で、技術の進展等を踏まえ、安全基準の適時適切な見直しを行う。
 
B 国民生活を支える物流システムの構築
 
 高齢化やeコマースの進展に即応した付加価値の高い物流サービスなど国民生活の多様化に的確に対応したサービスの提供を促進するとともに、物流事業に関する大幅な規制改革の下で、このような創意工夫に満ちた商品の開発が期待されているが、その場合においても、事後チェック型の適切な市場の監視を行うことにより、安定的かつ円滑な物流システムの確保や消費者利便の保護を図る。     
 また、都市部において、作業空間が十分に確保されていないため、物流作業が市民の通行等の障害となり、また、作業効率の低下を招いている場合がある。このような点にかんがみ、国民生活を支える物流が快適な都市生活と調和するよう、街づくりにおいて物流の円滑化にも配慮した取組を行う。
 さらに、災害等の緊急時への対応など国民生活を支えるために必要な物流機能を確保する。
 
(3) 今後の推進体制について
 
@ 国における推進体制
 
 省庁再編により、物流に関わる各種行政がより連携して、施策を実施することが可能になる体制が発足したが、関係機関がこれまで以上の緊密な連携を図り、新大綱に基づき、総合的かつ一体的な物流施策を推進する。さらに、施策の着実な実施を図り、実施状況を広く国民に知らせるため、年1回程度のフォローアップを実施し、その成果を公表する。
 
A 地域における推進体制
 
 国の出先機関、地方公共団体、物流事業者、荷主等による地域の実情に応じた連絡体制の下、引き続き総合的な施策の推進を図る。
 その際、地域毎の課題に応じて、取組を重点化するとともに、必要に応じ他の地域と連携する等により、効果的な施策の実施を図る。
第二部 具体的施策
 
 総合的な物流施策の推進に当たっては、当面、次の施策を強力に推進することとする。また、第一部に示す基本的な考え方に基づき、以下に掲げる施策に加え、物流が抱える課題を解決するための施策を具体化し、推進することとする。
 
(1) 国際競争力のある社会実現のための高度かつ全体効率的な物流システムの構  築
 
@ 高度かつ全体効率的な物流システムの構築のための施策
 
(物流の共同化・情報化・標準化の推進)
(ア) 物流の飛躍的な効率化、さらには環境負荷の大幅な低減を実現する観点から、物流活動の共同化を進めるとともに、これまで実施されてきた各種施策の成果も活用しつつ、物流分野における情報化・標準化を推進する。
 物流に係る広範な取引の情報化に必要な物流EDIについては、インターネットに対応可能な構造(拡張可能なマーク付け言語(XML)に対応可能な構造)である国内物流EDI標準(JTRN)の普及実態を業種横断的に把握しつつ、その普及に努めるとともに、国際物流に関しても、標準EDIの開発・導入を推進する。さらに、生鮮食品等の分野においても標準EDIの普及に努める。また、EDI化に対応した出荷・輸送・荷受一貫ラベル(STARラベル)のJIS規格化を行う。
 また、地理情報システム(GIS)等の物流分野への活用の促進や輸送モード横断的な情報プラットホームである物流総合情報提供システムの構築等を図るとともに、輸送分野毎の情報化を促進する。道路輸送の分野では、トラック運送事業の高度情報化並びに自動車の走行を支援するITSの開発及び活用を進めるとともに、道路交通情報提供を行う民間事業者が渋滞予測等の新サービスを行うための環境を整備する。海上輸送の分野では、海上物流の効率化と安全性の向上を図るため、船舶の知能化及び陸上支援の高度化などITを活用した次世代海上交通システムの構築を進める。さらに、航空貨物の分野では、航空運送状等に関する情報を関係者間で電子的に交換するためのシステムであるカーゴコミュニティシステム(CCS)について、官民のシステムの接続等によりネットワークの効果を高める。
 
(商慣行の改善)
(イ) 社会的に非効率な物流活動を招く恐れのある商慣行について、商慣行実態調査の実施や、物流合理化ガイドラインの活用等により改善を図る。その際、物流合理化ガイドラインについてフォローアップを行うとともに、業界の実態等を踏まえ必要に応じて見直しを行う。
 また、個別の物流コストの低減のみに止まらず、企業内・企業間の情報共有化による全体的なコストの低減の観点が重要であることから、その前提となる、より正確な物流コストの把握と管理を促すため、「物流コスト算定活用マニュアル」の利用推進、「物流コスト実態調査」結果の普及・活用に努めるとともに、活動基準原価計算(ABC)等の物流コスト把握のための有効な手法の活用を慫慂する。
 さらに、荷主に対して物流改善を行う提案型物流サービスを物流事業者が行う場合の環境整備を行う。
 
(規制改革、行政手続の簡素化・効率化)
(ウ) これまで実施してきた規制改革措置の成果をより確実なものとするとともに、引き続き参入規制、運賃・料金規制の緩和等の規制改革を推進することにより、利用者の自己責任による事業者選択の拡大及び事業者の自由な経営戦略の展開を促進する。具体的には、規制改革推進3か年計画において示された手順、スケジュール等に従って進める。
 また、技術の進展等を踏まえ、安全基準の適時適切な見直しを行っていくことにより、民間セクターの過度な負担を軽減する。
 さらに、申請者負担の軽減を図るため、航空輸出貨物について予備審査制度の導入や一定の金額以下の小口急送貨物についてマニフェストによる申告を認める等行政手続の改善を進めるとともに、特殊車両通行許可申請手続等の電子化(ペーパーレス化)、ワンストップサービス化等の推進により、手続の簡素化・効率化を進める。
 
(新技術の開発と利用)
(エ) 物流の迅速化や効率性の向上等に資する新技術の開発と利用に積極的に取り組むこととし、陸上輸送の分野においては、道路交通情報通信システム(VICS)、ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)、先進安全自動車(ASV)、走行支援システム、新交通管理システム(UTMS)、電子ナンバープレート(スマートプレート)、インターネットITS、プローブ情報システム等のITS技術の開発・活用を促進する。また、海上輸送分野においては、次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発や、ITを活用した次世代海上交通システムの構築等への取組による海上輸送の新生を図るとともに、テクノスーパーライナーの事業化を進める。航空輸送分野においては、次世代航空保安システムの整備を推進する。そのほか、貨物や輸送機器の電子的な管理手段として今後広く利用が見込まれる狭域通信(DSRC)システムや無線利用による移動体識別(RFID)について、その導入・普及を促進する。さらに、空間を考慮した新しい経済モデルにより効率的な物流の在り方を分析する等、人文・社会科学分野の研究にも取り組む。
 
(ユニットロード化の推進)
(オ) 作業効率を向上させるとともに、高齢者や女性にも適した作業環境の構築に資する一貫パレチゼーションを中心としたユニットロード化を促進するため、その普及のための調査を実施するとともに、JIS規格パレットの共同利用・共同回収に資するパレットプールシステム等の浸透やユニットロード化に資する物流機器の導入及び施設の設置に対する支援等を図る。
 また、物流活動を一貫してのパレット利用を促進するため、引き続き、T11型パレットを基本とする「ユニットロードシステム通則」の普及等を行う。さらに、各業種におけるユニットロード化に資するとの観点から、JIS規格化されたパレットによる「パレットシステム設計基準」の標準化を行う。加えて、T11型パレットの国際標準化や、それを基本としたJIS規格パレットのアジアにおける普及に取り組む。
 
(物流関連社会資本の整備推進等)
(カ) Aに記述する国際物流拠点の機能強化のための関連社会資本の整備のほか、国内での地域間物流及び都市内物流に関連する社会資本の整備を進める。
 地域間物流においては、マルチモーダル施策を推進することとし、トラック輸送については、効率的な広域物流ネットワークを形成する高規格幹線道路及びこれと一体となって機能する地域高規格道路等の幹線道路網並びに物流拠点を結ぶアクセス道路の整備を重点的に進める。また、車両の大型化(総重量25トン)に対応するため橋梁の補強等を進めるほか、幹線輸送の効率化・共同化の推進のため関係省庁が連携して、流通業務施設の集約的整備、高規格幹線道路のIC周辺等での広域物流拠点と道路の一体的整備等を進める。内航海運については、船舶の高速化や複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備等を進める。貨物鉄道については、主要幹線鉄道の貨物輸送力強化等を進める。これらに加えて、関係機関が連携・共同して作成する広域交通基盤連携強化計画に基づき、空港、港湾、駅等の物流拠点及び高規格幹線道路並びにこれらを相互に接続するアクセス道路等を重点的かつ効果的に整備するマルチモーダル交通体系連携整備事業を推進する。
 都市内物流においては、都市内交通を円滑化してトラック輸送の定時性及び速達性を改善するため、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、通過交通を迂回させる環状道路、バイパス等の整備、交差点及び踏切道の改良等によるボトルネック対策、交通管制センター等の交通安全施設の整備等の交通容量拡大策とTDM施策を推進する。また、関係省庁、地方公共団体及び民間事業者が連携して、市街地外縁部の環状道路周辺や臨海部への物流拠点配置及び都市内集配拠点の整備の促進、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及び荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用の推進並びに物流に配慮した合理的な駐車規制を実施する。
 
A 国際物流拠点の機能強化等のための施策
 
(国際物流関連社会資本の重点的整備・機能向上等)
(ア) 海上輸送の効率性と船舶航行の安全性を両立させた海上ハイウェイネットワークを構築し、物流の効率化を図り、近隣の先進港湾と遜色のないレベルまで港湾機能を向上させる。具体的には、国際海上コンテナ輸送の増大や船舶の大型化に対応して、東京湾口航路等の国際幹線航路、中枢・中核国際港湾における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル等の整備を進め、輸出入コンテナの陸上輸送費用を施設配置が平成9年大綱の策定時のまま推移した場合と比較して21世紀初頭に約3割削減することを目指す。また、ITの活用等によりコンテナターミナルの能率を飛躍的に向上させるとともに、外貿バースに隣接した内貿フィーダーバースの計画的整備等を行うことにより、内外貨物の積替えの円滑化を図る。さらに、増大する輸入コンテナ貨物の流通加工ニーズに対応するための施設の港湾地区における立地の促進を図る。併せて、PFI等の手法も含め整備運営の効率化を図るとともに、コンテナターミナルの効率的運営や使い勝手の良い港湾施設使用料金の在り方及び港湾荷役の効率化・サービスの向上に関する検討を進める。
 国際航空貨物輸送に関しても、増大する需要に対応するため、大都市圏における拠点空港の整備を推進する。
 これらと併せて、ISO背高海上コンテナ等の輸出入貨物の円滑な陸上輸送を確保するため、トンネルの再改築等の道路構造対策や港湾・空港へのアクセス道路の整備を進めるとともに、鉄道による海上コンテナ輸送に関する検討を行う。
 
(港湾の24時間フルオープン化等への対応)
(イ) 平成13年4月には、日曜荷役の恒久的実施、祝日の平日並夜間荷役の実施、年末年始休暇の短縮及びターミナルゲートオープン時間の延長に関し労使間で合意が得られた。引き続き、港湾荷役の更なる効率化・サービス向上を図るため、情報化の推進、作業の共同化等による事業基盤の強化を進めるとともに、行政手続においても取扱時間の延長等に努めつつ、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向け、関係者の取組を促進する。
 また、迅速な通関に資するため、予備審査制度及び平成13年3月に導入した簡易申告制度の周知と利用促進を図る。
 
(各種手続の電子化、ワンストップサービス化)
(ウ) 規制改革推進3か年計画に基づき、平成13年度中に、輸出入及び港湾諸手続について、関係官庁の中でネットワークを通じた効率的な情報の共有・活用を可能とするための検討体制の整備を図る。その際、統計情報を含め、現行の提出書類を徹底的に見直し、申請手続フォーマットの集約化を検討する。
 また、平成13年度中に、通関情報処理システム(NACCS)と港湾EDIシステムの接続を行うことに続き、平成14年度中に、NACCSと外国為替及び外国貿易法に基づく輸出入許可・承認手続システム(JETRAS)の接続及びNACCS、港湾EDIシステムと乗員上陸許可支援システム(仮称)の連携を行う。さらに、航空貨物通関情報処理システム(Air−NACCS)を更改し、機能強化及び地域の拡大を図る。加えて、平成15年度までの実現を予定している輸出入手続の電子化の一環として、民間の公金収納インフラの利活用や各種輸出入手続の申告・申請・受付システムと貿易関連手続の電子化に係る民間システムとの連携等を検討する。また、国際的な税関手続にかかる申告項目及び電子申告フォーマットの標準化を推進する。
 さらに、関係省庁及び港湾管理者への輸出入及び港湾諸手続に関する各電算システムの利便性向上に取り組むとともに、届出項目の整理、調整等を進め、できる限り早期に、ワンストップサービス化を完了する。
 このほか、陸上輸送、外航海運、港湾運送等様々な事業者が介在する国際海上貨物輸送分野においては、民間におけるEDIの導入を促進するとともに、UN/EDIFACTとの整合性を確保した形で、EDIデータ項目の定義等を行い、国内物流EDIや民間貿易金融EDI等との連携を支援する。
 
(2) 社会的課題に対応した物流システムの構築
 
 環境問題等の社会的課題に対応するため、(1)に掲げた効率化施策に加えて、以下の施策を実施する。
 
@ 地球温暖化問題への対応のための施策
 
(輸送機関の単体対策等)
(ア) 本年4月に創設されたグリーン化税制の活用等により低燃費車の導入を促進するとともに、トラック輸送の効率化の観点から、車両の大型化やトレーラ化を推進する。大型トラックへの速度抑制装置の装備義務付けにより、大型トラックの燃費向上を図る。
  また、エネルギー消費効率の良い船舶(エコシップ)の導入促進を行うとともに、次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発を推進する。
 このほか、国際航空機、外航船舶のバンカー油(燃料油)等による温室効果ガス排出の抑制を図るための国際的な検討を進める。
 
(社会資本整備)
(イ) 車両の大型化に対応した橋梁の補強等道路整備や、国際海上コンテナターミナルや多目的国際ターミナル等の拠点的整備により輸出入貨物の国内陸上輸送距離を削減する。
 
(モーダルシフトの推進)
(ウ) 鉄道貨物輸送については、貨物鉄道事業者が顧客のニーズに対応した優れたサービスを提供できるよう、主要幹線鉄道の輸送力増強、所要時間の短縮、荷役の効率化等を推進するとともに、貨物鉄道事業の活性化のため、日本貨物鉄道株式会社の完全民営化の早期実現を図るよう努めることとし、このため同社の経営改善を推進する。内航海運については、運輸施設整備事業団の共有建造制度の活用によるモーダルシフト船の建造、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備、港湾荷役の効率化・サービスの向上に関する検討等を進める。また、鉄道貨物駅や港湾へのアクセス道路を改善する。
 
(民間の自主的な取組を推進するための環境整備)
(エ) 荷主や物流事業者が自らの物流活動による二酸化炭素排出量の把握や環境負荷の低減に取り組むことを促進するため、環境調和型の物流システムの在り方及びその標準化を検討するとともに、物流事業者が環境達成度を自己評価できるガイドラインを作成し、その普及を図る。
 また、荷主や物流事業者が協調して行う輸送の効率化、低燃費車の導入等への支援方策や、このような民間事業者の取組の指針となる二酸化炭素の削減目標を設定することについても検討を行う。
 
A 大気汚染等の環境問題への対応のための施策
 
(トラック輸送の効率化)
(ア) 都市内物流の効率化を図るため、トラック輸送について、共同輸配送の実施や物流拠点の整備等によって貨物自動車運送事業の魅力を高めることにより、自営転換を進める。
 
(トラック等からの大気汚染物質の排出の削減)
(イ) トラックからのPM、NO等大気汚染物質の排出の削減を図るため、自動車排出ガス規制を強化するとともに、低公害車・クリーンエネルギー自動車等の普及を図るため、グリーン化税制を活用するとともに、低公害燃料供給施設の整備を支援するほか、電気貨物自動車の共同利用システムの普及を図る。また、平成16年末までに軽油の低硫黄化を実施するとともに、現在使用されている車両への対策として、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)の装着とこれに必要な低硫黄軽油の利用促進、貨物の積卸等のための継続的な停止の際のアイドリング・ストップ等エコドライブの励行等により、ディーゼル車からのPMの排出を削減する。さらに、改正自動車NO法により、車種規制及び事業者指導等を適切に行う。
 
(都市内交通の円滑化等)
(ウ) トラック交通の集中している大都市部の幹線道路等の沿道におけるPM、NOx等による大気汚染等の環境問題へ対応するため、道路交通の改善に取り組む。
  このため、交通安全施設等の整備を進めるとともに、ITSの開発・活用を進める。さらに、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、三大都市圏における構造的な渋滞解消を図るため、通過交通を迂回させる環状道路等の整備や主要都市におけるボトルネック解消のための交差点及び踏切道の改良を進めるとともに、住宅地域に集中した交通を湾岸部に転換させるため、並行する有料道路間で料金に格差を設ける環境ロードプライシングの試行的実施などTDM施策の推進を図る。同計画の策定に関し、地域における自動車交通の調整、環境負荷の小さいトラックの導入等によるエコ共同集配事業等を実施するTDM実証実験の成果も活用する。併せて、荷主や物流事業者が協調して行うPM、NOx等の大気汚染問題の改善のための試みを促進する。
また、大型トラック等に起因する自動車交通騒音を低減するため、低騒音舗装の敷設、遮音壁、環境施設帯の整備を行うとともに、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づき、沿道住宅の防音化などを実施する。
 
(物流拠点の整備等)
(エ) 都市内に流入するトラックの交通総量の抑制に資するよう、流通業務施設の集約的整備の推進や、市街地外縁部の環状道路周辺や臨海部への物流拠点の立地を促進する。
 また、都市内の道路交通の円滑化を図るため、都市内建築物への荷捌き施設の付置、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及びトラックベイ等荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用を推進するとともに、物流に配慮した合理的な駐車規制を実施する。
 
(船舶・鉄道の活用) 
(オ) 都市内物流を効率化し、環境負荷の低減を図るため、通過交通を始めとする都市内トラック交通需要について、輸送機関の特性に応じ、船舶、鉄道輸送の利用推進の可能性について検討を行うほか、大都市部の外沿に位置する港湾の活用を図る。
 
B 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築のための施策
 
 生産拠点の状況、リサイクル関連拠点の配置計画、当該拠点間における輸送等の実態把握に努めるとともに、鉄道・海運の活用を含めて効率的な静脈物流システムについての検討を行い、その具体化を図る。
 また、広域リサイクル施設等の立地に対応した港湾施設等の整備、静脈物流の円滑化に資する廃棄物海面処分場の整備等、所要の施設整備を推進する。
 さらに、リサイクルのための共同事業の推進と競争政策の在り方に関するガイドラインの検討を進める。 
 
C 事故防止等物流の安全問題への対応のための施策
 
(事故防止)
(ア) 運送事業者の運行管理の充実を図るとともに、大型トラックの高速道路における速度超過による事故を防止するため、平成15年9月から速度抑制装置の装備を義務付ける。また、トラックの事故防止のためには、過積載の防止等安全関係規制の遵守についての関係者の理解が重要であることから、運送事業者及び荷主に対する安全対策の啓発に努める。
 さらに、交通安全施設等の整備を進めるとともに、ITを活用した新たなシステムの採用により、道路交通の安全性を高めることとし、VICS、ASV、走行支援システム、UTMS、スマートウェイ等のITSの開発・活用を進める。 
 加えて、海上交通の安全性確保のため、航海支援情報の高度化、船舶航行のボトルネックが生じている国際幹線航路の整備、港内静穏度の向上、船舶輻輳海域における船舶の新しい通航方式等についての検討、海上交通情報機構の整備・運用等を行うほか、ITを活用した次世代海上交通システムの構築を進めることにより、船舶の衝突・座礁の回避の支援、船舶の交通管制及び安全管理の高度化等を図ることとする。
(安全規制の適時適切な見直し)
(イ) 技術革新、社会の経済情勢の変化を踏まえ、安全規制が所期の目的に照らし過重なものとなっていないかを点検する。
 具体的には、分割不可能貨物を輸送する基準緩和車両による輸送に関する規制について、関係法令が厳に遵守される制度、方策等の検討を行い、現行の規制の緩和について結論を得る。また、踏切道及びその周辺の交通規制のあり方について、引き続き検討する。
 
(3) 国民生活を支える物流活動を確保するための施策
 
 (国民ニーズに対応した物流システムの構築)
 (ア) 食品等への高品質・高鮮度志向等消費者ニーズに対応するため、生産地  から消費地までのコールドチェーンシステム(低温物流一貫体系)の整備を  促進する。
 
(事後規制への転換における消費者利便の保護)
(イ) 倉庫業の参入許可制を登録制に改め、料金の事前届出制を廃止するとともに、貨物自動車運送事業及び貨物運送取扱事業の運賃・料金規制を事後チェック型に転換することについて結論を得る。その際、優良トランクルームの認定制度を導入するなど、消費者保護を図る。
 
(街づくりにおける物流の円滑化への配慮)
(ウ) 都市内建築物の構造等において、物流円滑化への阻害要因を改善・解消するための指針を作成する。また、都市内建築物への荷捌き施設の付置、商業地区を中心とした共同の荷捌き施設及び荷捌きのための路上停車施設の設置と適正な運用を図るほか、商業業務地における荷物の搬入の容易化を検討するなど、街づくりにおいて物流の円滑化に配慮した取組を行う。
 
(物流の安定性の確保)
(エ) 離島地域を含め、国民生活を支えるために必要な物流機能を確保する。また、災害等の緊急時においても、必要な物流機能を確保することを目指し、橋梁・岸壁等の耐震・耐雪性等の向上や河川敷の活用等緊急時の代替手段・ルートの確保を図る。
 さらに、将来にわたっての貿易物資の安定輸送の確保を図るため、我が国外航海運の競争力を維持強化するための施策や船舶交通が輻輳する国際海峡等海上輸送ルートの安全確保対策を講じる。
(参考)
平成9年大綱の総括的評価
 
 
1.平成9年大綱の目標に関する総括的評価
 
(1) アジア太平洋地域で最も利便性が高く魅力的な物流サービスの提供
 
 国際物流面においては、各種インフラの整備及び主要な空港・港湾へのアクセスの改善、輸出入等に係る手続の短縮化等により、リードタイムの短縮、利便性の向上等一定の効果を上げてきたものの、アジア太平洋地域において先進的な国際港湾等の整備も進み、我が国と比べコンテナ貨物の取扱量を大きく伸ばしている中、我が国の国際港湾においては、コンテナ貨物取扱量の伸びは低位にとどまっているほか、船舶の大型化や港湾のフルオープン化への対応や輸出入及び港湾諸手続に関する電子化・ワンストップサービス化の実現による一層の簡素化・効率化の必要性も依然として指摘されている。
 また、道路、港湾、空港等の物流関連社会資本等の整備、物流システムの標準化・情報化の進展等により、国際港湾等と高規格幹線道路網との接続は逐次改善されるとともに、リードタイムの短い輸配送、ジャストインタイム配送、自動検品等の高度な物流システムが実現し、利便性が高く魅力的な物流サービスが提供される環境が整いつつあるが、物流関連社会資本等の機能強化と各輸送モード間のアクセスの改善、都市内交通の円滑化、物流システムの一層の標準化・情報化、過度な多頻度小口・時間指定配送等非効率な商慣行の改善等が依然として課題となっている。
 これらの事情から、アジア太平洋地域との相対的な関係を変化させるまでには至っていないため、これらの課題に対応し、高度かつ全体効率的な物流システムの構築を図ることにより、引き続きより利便性が高く魅力的な物流サービスの提供がなされる必要がある。
 
(2) 産業立地競争力の阻害要因とならない水準のコストでの物流サービスの提
  供
 
 平成9年大綱策定以降、我が国の物流コストは僅かではあるものの低下傾向にあり、例えば、米国と比較しても必ずしも高いとは言えない水準にあるが、アジアの先進港湾に比べ港湾諸料金は概ね高い水準にあり、あらゆる面で国際的な競争が従来以上に激化している中、我が国の国際競争力を高めていくために、物流に係るトータルコストの一層の低減に努めていくことが重要である。
 
(3) 物流に係るエネルギー問題、環境問題及び交通の安全等への対応
 
 物質輸送の円滑化のためのハード・ソフト両面のインフラの整備やトラックの自営転換の推進、交通事故抑制対策等を進めてきたが、大気汚染物質の排出削減の課題や、地球環境の保全、循環型社会の構築といった新たな課題への対応のための更なる取組が必要である。
 
 
2.横断的課題への対応及び分野別の課題への対応に関する総括的評価
 
(1) 横断的な課題への対応
 
@ 社会資本等の整備
 物流に必要な社会資本の整備については、受益者負担を基本としつつ、道路、鉄道、港湾、空港、物流拠点の相互接続、交通上のボトルネックの解消及び国際ハブ港湾・大都市圏拠点空港の整備の3分野に重点を置き、公共工事コスト縮減の推進、費用及び投資効果の数量的な評価の実施等により効率的・効果的に実施したところであり、都市内物流、地域間物流及び国際物流の各分野においてそれぞれ着実に整備が進展した。今後は、効率的で信頼性の高い物流ネットワーク構築に向けて引き続き重点的に物流関連社会資本の機能強化を進めることが必要である。
 
A 規制緩和の推進
 鉄道貨物輸送分野など一部の分野を除き、需給調整に基づく参入規制、運賃・料金規制について国の関与を最小限にする緩和措置を実施することにより、事業者間の競争を促進するための環境整備を行う等物流分野における規制改革を着実に進めてきた。今後とも、これまで実施してきた規制改革措置の成果をより確実なものとするとともに、引き続き参入規制、運賃・料金規制の緩和、技術の進展等を踏まえた安全基準の適時適切な見直し等、物流分野の規制のあり方について不断に見直すことにより規制改革を推進する必要がある。また、各種手続についても電子化(ペーパーレス化)、ワンストップサービス化等の推進を通じて、できる限り簡素化・効率化を進める必要がある。
 
B 物流システムの高度化
 物流分野におけるEDIの標準化、梱包ラベルの標準化、ITS等の新たな技術開発等各種の標準化・情報化の施策の大部分が実施され、具体的な実用化の動きが見られるが、物流システムの高度化による効果を一層顕在化させるために、更なる対応が必要である。
 また、パレタイズ可能貨物のうちのパレタイズ貨物の割合は、調査対象業種のうち主要10業種においては80%以上、特にそのうち上位6業種については90%を超える水準となっているが、全体では、平成8年度の76.2%から平成11年度には76.5%へとほぼ横這いで推移している。今後は、未だパレット化が十分に進展していない業種・業界毎のパレットサイズの標準化や、パレットだけでなくその他の荷役機器の標準化も含めた総合的なユニットロード化が必要である。
 
 
(2) 分野別の課題への対応
 
@ 都市内物流
 環状道路、バイパスの整備、交差点・踏切等のボトルネック対策、交通需要マネジメント(TDM)施策の推進等による道路交通の円滑化、自営転換の促進、物流拠点整備等によりトラック輸送の効率化を推進した。これにより、平成14年には2,100箇所まで削減するとされている全国の主要渋滞ポイントも平成10年4月の3,200箇所から平成13年3月末現在で2,600箇所まで削減されたが、都市中心部の道路交通渋滞等の問題は引き続き深刻であり、三大都市圏人口集中地区の朝夕の走行速度は平成10年4月の21キロメートル毎時から平成11年度までほぼ横這いとなっている。また、トラック全体の積載効率は、多頻度小口輸送等により走行量が増加する一方、低迷する経済状況を背景にした貨物の減少により、平成8年度47.1%が平成11年度には44.8%へと低下した。
 今後は、大都市における大気汚染等の公害問題が深刻の度を増すとともに、空間的制約のある都市中心部の道路交通渋滞等の問題への対応が必要であることに鑑み、引き続きトラック輸送の効率化を推進していく必要がある。
 
A 地域間物流
 高規格幹線道路、地域高規格道路等の幹線道路ネットワーク、広域物流拠点の整備や車両大型化、幹線共同運行の促進等によるトラック輸送の効率化、船舶の大型化・近代化による内航海運の効率化、インフラ整備支援による鉄道貨物輸送の輸送力増強、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備、港湾・空港等の物流拠点と高規格幹線道路のIC等をつなぐアクセス道路整備等による内航海運及び鉄道貨物輸送の活用により、多様な輸送モード間の競争と相互の連携、利用者の自由な選択を通じて適切な役割分担がなされることを基本的目標とするマルチモーダル施策を推進した。  
 これにより、21世紀初頭に約9割を目指す高規格幹線道路等のIC等から10分以内に連絡が可能な主要な空港・港湾の割合は、平成9年度末の29%から平成12年度末には36%に上昇するとともに、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルへの陸上輸送半日往復圏の人口カバー率は、平成7年4月の約7割から平成13年4月の約8割まで上昇した。しかしながら、欧米に比して高規格幹線道路等と空港・港湾への連絡率は依然として低いこと等から、引き続き必要な物流関連社会資本の整備を相互連携を図りつつ重点的・効率的に進めることが必要である。
 また、モーダルシフト化率(長距離雑貨輸送における鉄道・内航海運分担率)は、平成10年度現在で約43%であり、環境負荷の軽減の観点からは、引き続き鉄道・内航海運の戦略的な活用が重要である。
 
B 国際物流
 中枢・中核国際港湾における国際海上コンテナターミナルの拠点的整備、輸出入及び港湾諸手続の電子化・ワンストップサービス化を図ることによる簡素化・効率化の取組、企業間の貿易関連手続を電子化するためのシステムの開発の支援、輸出入貨物の国内陸上・海上輸送の円滑化のための措置等の施策を推進した。これらの取組により、輸出入コンテナ貨物に係る陸上輸送費用総額は、平成9年大綱策定時の施設配置のまま推移した場合と比較し、約1割削減されるとともに、税関手続の平均所要時間(輸入申告から輸入許可まで)が平成8年3月の10.2時間から平成10年3月には5.6時間に短縮された。
 しかし、船舶の入港から輸入許可までの全体で必要な時間は平成8年3月の84.9時間から平成10年3月には81.1時間とわずかに短縮されているものの、従来の目標である「入港してコンテナヤードを出るまでに必要な時間を2日程度に短縮」には程遠い数値である。
 また、国際化が進む中で、主要な海外の物流拠点と比較して、ハード・ソフト両面の遅れが指摘されており、我が国の国際競争力の維持・向上の観点から、引き続き国際物流の効率化を推進する必要がある。 

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